U-Boat Leader

The Battle For The North Atlantic.

U-Boat Leader

「U-Boat Leader」は、第二次世界大戦における独潜水艦(Uボート)の戦いをテーマにしたソリティアウォーゲームである。Uボート部隊の作戦行動は、大西洋や極北を中心に世界中の全大洋上で展開され、生還率が30%にも満たない壮絶な戦いが大戦終了まで繰り広げられた。

歴史

「Uボート」とは、WW1~WW2にかけて、ドイツ海軍が運用した潜水艦を指す。潜水艦はこの両大戦において重要な海軍戦力として扱われ、Uボートは約1000隻も就役した。Uボートの主な目的は通商破壊であり、特にイギリスとアメリカに対して多く実施された。

島国のイギリスは伝統的な海軍大国であり、その強力な戦力を持ってしても排除しきれないUボートの存在は、国家の命運を左右する重大な脅威となった。

U-52

時の英国首相ウィンストン・チャーチルは、戦後に回顧してこのような言葉を残している。
"The only thing that ever frightened me during the war was the U-Boat peril."
(私が本当に恐れたのは、Uボートの脅威だけであった)

概要

ボックス

「Uボートリーダー」は、DVG社が展開するソリティアウォーゲームの「リーダーシリーズ(Leader Series)」にラインナップされた一作であり、ゲームシステムにはそのコアシステムが採用されている。

多くの Leader シリーズでプレイヤーは、軍用機や攻撃ヘリの飛行中隊を率いる指揮官の立場となるが、本作ではドイツ海軍のUボート潜水戦隊の指揮官となる。

航空機の戦いと異なり、海上での戦いは極めて広い範囲に部隊が展開するのが特徴だ。

大西洋の戦いにおいてUボートの戦闘目的は、上述の通り通商破壊であり、敵国のシーレーン(海上通商路)における輸送力低下が戦略的な目標であった。したがって主な攻撃対象となるのは海運を担う貨物船などの商船となり、その狙いは貨物の奪取ではなく艦船の破壊である。ただし「Uボートリーダー」には戦争経済のルールはなく、プレイヤーは、与えられた作戦レベルでの勝利を目指すことになる。

局面

キャンペーンシート

本作は、第二次世界大戦における大西洋の戦いで、異なる4つの時期を扱っており、それぞれの時期を「キャンペーン」と呼ぶ。それぞれのキャンペーンは独立したシナリオで、史実に基づいた状況に合わせて細かく数値設定がなされている。

また、選択ルールを用いることで、複数のキャンペーンを通してプレイすることも可能である。

司令

本作では、プレイヤーである指揮官に委ねられた裁量権を、抽象的に「特別オプション点(Special Option Point: SO)」という数値で表現している。プレイヤーは特別オプション点を消費することで、自分の部隊となるUボートの編成や、配下のUボートに特殊な任務を与えることができる。端的にいえば、特別オプション点は本作のゲームリソースのひとつである。

この特別オプション点は、プレイヤーが選択したキャンペーン(シナリオ)と期間(キャンペーンの長さ。短期・中期・長期のいずれか)ごとに決められており、イベントカードによる例外的な効果を除けば、原則としてゲーム中に増加することはない。

ルールに記述された場の設定が終わったら、特別オプション点を用いて、自分のUボートを選択することからゲームは開始される。

構成

大まかなターン構成は以下の通りである。

  • 戦略セグメント
    特別オプション

    ここでは大きく2種類のことが行える。いずれも残っている特別オプション点を消費する。
    ひとつは、「航空偵察」「補給船の配備」「新型魚雷の導入」等々の、作戦を一時的・限定的にせよ有利な恩恵をもたらす戦略的なオプションであり、もうひとつは配下のUボートに対して、個別に「機雷敷設」「特定の敵艦への攻撃」「襲撃行動」などの特別任務を割り当てて任命することである。

  • 作戦セグメント
    キャンペーンマップ

    ある1隻のUボートを選択し、それをマップ上(正確にはキャンペーンシート上)で海域エリアや港などへ移動させることができる。
    海域への移動や滞留は哨戒行動となり、ルールやマップ上に定められた枚数のイベントカードを引いて適用しなければならない。また、戦略セグメントで特別任務が任命されていれば、このタイミングで実施することができる。

  • 戦術セグメント
    • 接触フェイズ
      キャンペーンマップ
      海域上にいるUボートは、望めば敵の護送船団と接触が行える。
      接触を行うのであれば、接触判定を行う。
      接触判定によって、敵の船団と何回の遭遇が発生するかがまず決定される。それがゼロなら戦闘は発生しない。
      遭遇ごとに船団カードを引くことで、接触が「商船」「護衛艦」「海軍艦艇」のいずれの船団であるかが判定され、その陣容も決まる。敵船団の陣容を確認した上で戦闘を回避してもよい(が、戦果なしで若干の不利益だけ被る)。
    • 戦闘解決フェイズ
      敵船団との戦闘は戦術ディスプレイ上で行われる。
      戦闘の処理は、Uボートごと1隻単位で行われる。また、戦闘中に味方のUボートを呼び寄せて複数で船団を攻撃する群狼戦術を試みることも可能である。
    • 戦闘終了フェイズ
      戦術ディスプレイ上の戦闘が終了した後の処理などを行う。
  • 再編成セグメント
    全てのUボートの行動が終了したら、Uボートは経験点を得て経験レベルが上昇する。港にいるUボートは、魚雷や弾薬の補充や、ストレスの回復などが行われる。

サイクル

接触サイクル

Uボートが海域エリア上にある限り、魚雷や弾薬を補充することはできない。それらを再装填するには、港へ帰投する必要がある。

あるUボートが港マスから出港し、ひとつかそれを越える作戦セグメントを経て、再び帰投するまでの流れを「哨戒任務」という。港から出港し、どこかの港へ帰投したら、それでそのUボートの哨戒任務数が1回カウントアップする。

それぞれのUボートの哨戒任務数はすべて記録される。そして、そのキャンペーンの期間(短期・中期・長期)で規定された哨戒上限数に達したUボートは任務を解かれ、ゲームから除かれる。こうして、全てのUボートが、哨戒任務数が上限数に達したか、あるいは撃沈されたかしたら、そのキャンペーンは終了する。

戦術セグメントでは、Uボートを1隻ずつ「アクティブ」にして行動させる。そして接触判定が行われ、アクティブなUボートがその作戦フェイズで接触可能な最大数と、遭遇する船団の陣容が決まる。

哨戒サイクル

最大接触数を使い切るか、あるいはプレイヤーの意思でアクティブなUボートの作戦行動は終了する。配下の未行動なUボートの隻数だけこれを繰り返す。これが戦術セグメントのサイクルである。

兵装・艤装

Uボートのスペックはカードで表される。

Uボートカード

Uボートの主要な武装といえば魚雷である。Uボートに積載されている魚雷は「搭載」か「装填」のどちらかの状態にあり、魚雷管に装填されている魚雷のみが戦闘時に発射可能である。魚雷は極めて強力な兵器だが、戦闘中には装填された魚雷しか用いることが出来ず、また携行本数にも上限(艦種ごとに異なる)があり、補充するためには港へ帰投しなければならない。

特別オプションを使用することで、港で装填する魚雷を、高性能な「新型魚雷」にすることもできる。これはパターン航走魚雷と音響追尾魚雷の2種がある。

また、当時の潜水艦の多くには備砲が搭載されていた。現実の備砲は大別して、敵の艦船に対する甲板砲と、敵の対潜哨戒機に対応した対空砲(高角機関砲)であるが、本作では、航空機による対潜戦はイベントカードなどによって抽象的に表現されており、ゲーム中で使用する備砲は全て甲板砲として扱われている。装弾数も全艦一律6発である(これも港でリロード可能)。

乗組員

現実がそうであったように、本作でもUボートの乗組員は実戦経験を重ねることで、より高い技術が培われるようになっている。具体的には、Uボートが敵艦船を撃沈すると経験点を得て、その蓄積によって練度(技術レベル)が上昇する。

Uボートの練度には4段階あり、最も高いレベルのUボートは「エース」と呼ばれる。Uボートごとに、これら4段階の技術レベルはカードでデータ用意されていて(1隻ごとにカード2枚の各裏表=4段階)、高い練度を持つ乗組員の方が、より優れた技術を持つ。

ゲーム開始時から、高い練度のUボートを編成することも可能である。Uボートの初期編成は特別オプション点を消費することで潜水戦隊に組み入れるが、より高い練度のUボートを「買う」には、高い特別オプション点のコストを支払う。

これとは別に、Uボートによっては「潜入者」「冷静」「探索者」という特別能力を持っていることがある。特殊能力は、練度の低いUボートはほとんど持たず、経験を積み重ねて練度が高まると会得することが多くなる。優秀な艦では、複数の特殊能力を会得することもある。Uボートが所有する特別能力に応じた所定のタイミングで、より有利となる例外行動の実施や処理が行うことが可能となるのだ。

ストレス

ストレスカウンター

Uボートの過酷な戦いは乗組員に多くの苦難を強いた。本作では、敵からの攻撃によってUボート船体の損傷と乗組員の肉体的・心理的な疲労とが蓄積し続けることで、徐々に機能不全に陥ってゆく状況は「ストレス」という単一の数値で包括的に扱われている。

敵艦船からの攻撃によって損傷を被ると、Uボートのストレス値が増加する(あるいは撃沈される)。これは専用のカウンターによって示される。ストレス値が増加することによってUボートの状態は「平常」「動揺」「戦闘不能」という3段階のいずれかになる。

戦術ディスプレイ上で戦闘不能状態になったUボートは離脱する行動しか行えず、次ターンの作戦フェイズでも哨戒は不可となり、帰投と入渠(再編成)が必須となる。

敵艦船・陣容

船団カード

遭遇した敵艦船がどのような陣容であるかは、船団カードによって示される。戦闘開始時点では、船団を構成する艦船の種類と隻数、それに位置関係しかわからない。

艦船には、大別して「商船」「護衛艦」「海軍艦艇」がある。商船は武装していたとしても非力であり、撃沈すれば勝利点が入るのでUボートの最大目標である。それを守るのが護衛艦で、多くの商船団には護衛艦が付随している。

海軍艦艇は強力な武装を持ち、Uボートの大敵であるが、護衛艦と異なって撃沈すれば勝利点が入る(護衛艦からは勝利点が得られない)ため、目標ともなりうる。

敵船団の多くは、護衛艦によって護送された船団、すなわち護送船団である。前述の通り、護衛艦を撃沈しても(イベントなどで指定されていない限りは)勝利点は得られない。しかし、商戦を護衛する敵艦艇が保有する強力な対潜能力をまずは無力化しなければ、目標である商船を狙うどころか、自身の身さえも危うくするだろう。

船団カードと戦術ディスプレイ

接触した船団とUボートは戦術ディスプレイで戦闘が行われる。接触判定で引いた船団カードにより、船団の陣容と状況が提示される。

所感

「Uボートリーダー」はシミュレーション・ウォーゲームである。戦史や戦記などに描かれるUボート視点の戦いで特に印象的な要素が網羅的にカバーされており、歴史的な興味を満たすには十分なデザインとなっている。また、多くの抽象化と省略が施されているので、このジャンルのゲームとしてはルールの難易度は低めである。

ゲームの基本的なシステムはリーダーシリーズを踏襲していることもあって、同シリーズの他ゲームをプレイした経験があるなら、更に短い時間で本作を楽しむことができるだろう。ただ、このコアシステムを採用したためにオミットされた歴史的要素も多い。個人的には、クレッチマーなど著名なエースが実名で登場しないのが残念だった(クレッチマーに関していえば、U-99のデータが本作に用意されていないのは実に不可解である)。

戦術ディスプレイ上の処理はあっさりしており、運の比重も高めである。それはプレイ時間の短縮にも貢献しているので一長一短に思える。もし、もっと精密で複雑な戦術戦闘を望むのであれば、BGGに有志によって制作されたそのようなオプションルールが公開されているので試してみるとよい。

キャンペーン期間の「短期」は練習用と割り切り、時間が許すなら「中期」か「長期」でプレイすることをおすすめしたい。なぜか。「短期」の哨戒上限は1回なので、Uボート帰投後の魚雷・弾丸の再補充が行われない。だから、戦闘によって消耗したUボートを帰投させるか、それとも海上に滞留させて次のターンに群狼戦術を狙うか等々、本作の醍醐味のひとつである「Uボートのマネージメント要素」が短期ではどうしても薄くなってしまうからだ。

賛否あるようだが、アートワークはいい感じに無骨で、私には好みだった。

私は潜水艦の戦いを描いた2人用ウォーゲームのプレイ経験が何作かある。また、歴史的な興味から、WW2の大西洋の戦いに関する文献や小説を何冊も読んでいる。それらの経験と知識から、その内容に少しばかり物足りなさを感じつつも、私は「Uボートリーダー」を楽しんでプレイすることができた。

公開和訳

日本語ルールブック

「Uボートリーダー」は、2011年の発売から現在まで、国内ショップではほとんど扱われていない。私の観測範囲でわずかに店頭で販売されていたケースでも、ルールやカードは翻訳されていなかった。

そこで、制作した和訳したルールブックを、発売元であるDVGの許諾を得た上でBGGに公開したので、本作をお持ちの方はよろしければ参考までにご利用いただきたい。なおルールは、公式サイトで公開されているエラッタに対応した最新版の翻訳である。

[Japanese Rulebook | U-Boat Leader | BoardGameGeek]
http://www.boardgamegeek.com/filepage/102487/japanese-rulebook

公開した文書は、ルールだけではなく、テキストのみながらカード訳も含まれている。このカード訳は、イベントカードと護送船団カードが全文、商船カードは特殊効果のある2枚についてのみ訳した。

またキャンペーンシート4枚についても、ゲームに関わる部分の訳(テキスト)とターン進行(ラベル)を用意した。ついでなので、ヘルプシート訳(ラベル)や、本作には含まれていないルールサマリーも付けた。

FAQの抜粋

残念ながら、ルールブックはライティングに問題があって、難易度が低めのわりには読みづらい。また、曖昧な表記もいくつかある。このためBoardGameGeekのフォーラムには、ルールに関する応答が多数投稿されていて、これらを有志がまとめた非公式FAQ(英文)もBGGに公開されている。実はこれも翻訳しようかとがんばってみたのだが、文章量が多かったこともあって断念した。以下に、非公式FAQからいくつかの情報を抜粋して書いておく。

【注意】※これで全部ではない(というより、ごく一部) ※非公式な見解もある ※公式と非公式で相反する回答は公式裁定優先 ※矛盾する非公式見解は私の判断で選択して抜粋 ※だいぶ意訳している ※複数の回答をまとめたものもある ※私の誤訳や誤解があるかもしれない ※以上、ご注意を ※随時更新予定

  • (選択ルールの)U-2511 はどのキャンペーンでも使用可能。
  • 海域上で「特別任務:機雷」を実施するUボートは、まず機雷特別任務を実施(追加イベントカード引きも含む)した後に、そのエリアの哨戒情報(Patrolling)でイベントカードを引く。
  • 「特別任務:強襲」で海軍艦艇を雷撃する際は、装填区でも搭載区でも、いずれの魚雷も使用可能。
  • 作戦フェイズで1隻のUボートを哨戒行動(移動とイベントカード引き)で移動させるなら、いくつのエリアでも移動させてよい。ただし、新しいエリアへ移動するたびにイベントカード(Moving)を引くことを忘れないこと。
  • 作戦フェイズでイベントカードを引いたUボートは、このフェイズで港マスへは入れない。
  • 好戦的なUボートを用心深いUボートのように扱ってはならない(意図的に敵艦船より後に攻撃するようなことはできない)。
  • Uボートによる敵艦船の識別判定は、移動(Uボート移動と遅延移動)終了時、護衛艦の探知判定の終了時に行われる。また、Uボートが攻撃した未詳艦船は自動的に識別される。
  • 遅延移動で速力の遅い艦船が移動する方向は、恐らくこの図の青い矢印である。ただし、ルールで明確にされていない以上、図の赤い矢印方向への移動でも誤っているとは言えないだろう。
  • 護衛艦による探知判定は、「護衛艦による探知」ステップでのみ行われる。探知判定にはダイスを用いるので、識別判定のように、探知判定ではない何か別のことをきっかけ(例えば未探知のUボートによる攻撃)にして自動的に探知されることはない。
  • 浮上中のUボートは(可能ならば)雷撃と砲撃を同時に実施できる。
  • Uボートは、急速潜航[Crash Dive]を実施した同じターンに、その成否か関わらず、攻撃を行ってよい。
  • 複数の敵艦船から目標になったときに急速潜航をしたなら、攻撃してきた全ての艦船について、攻撃艦船1隻ごとにダイスを振って回避の成否を判定する。回避に失敗した敵艦船からは、浮上命中値による攻撃を受ける。
  • ただし、急速潜航で回避を失敗し、敵艦船からの浮上命中値での攻撃を何度受けたとしても潜航面のままである。
  • 戦術ディスプレイ上の警戒態勢[Alerted]カウンターは、すべてのUボートに影響を及ぼす。
  • 大破のときに小破を被っても大破が継続である。この後で更に小破を被ると撃沈する。
    →大破+小破=大破
    →(大破+小破)+小破=撃沈
  • 筋向かいの(点で接する)護送船団エリアは隣接していないので、移動だけではなく、探知などの距離を測るときにもそのように考える。
  • Propaganda(プロパガンダ)で得る勝利点は、ファイナルショットの結果であったとしても得られる。
  • 格納区の魚雷を装填区へ移すのは再編成セグメントで行う。

ギャラリー