メ弐号作戦

「宇宙戦艦ヤマト2199」第二章 太陽圏の死闘

メ弐号作戦

「メ弐号作戦」は、「宇宙戦艦ヤマト2199」にインスパイアされてつくられた二次創作のソリティアゲームである。プレイヤーは(タイトルから受ける印象とは異なり)ガミラス帝国軍の司令官となり、冥王星基地に迫りくるヤマトを迎撃する。

背景

表紙

本作は、第5話「死角なき罠」と第6話「冥王の落日」がベースになっている。「メ弐号作戦」とは、ヤマトの沖田艦長自らが発案した作戦で、地球を壊滅状態に追い込んだ遊星爆弾の発射基地を無力化することが目的だ。

劇中では、遊星爆弾の発射に使用していた大口ビーム砲を兵器(反射衛星砲)に転用し、それでロングレンジ攻撃を行うというシュルツの着想が功奏し、ヤマトはこの強力なビーム砲の直撃を3度も受けて損傷、ついには冥王星の海へ沈んでしまうのである(第5話)。

これは、ヤマトの乗組員たちが味わった最初の試練であり、その後の反抗戦(第6話)も含め、「宇宙戦艦ヤマト2199」での印象的なエピソードのひとつとなっている。

ゲーム構成

ゲームはターンを基本的な単位として進行する。ターンは幾つかのフェイズに分割され、それらをすべて行うと1ターンが終了する。これを最大12ターン行う。条件次第では、それより早いターンで終了することもある。

ターン構成

ターン構成はやや変則的である。冥王星の地上施設をヤマト側が発見したかをチェック(発見フェイズ)した後に、戦闘フェイズがある。戦闘によってガミラス軍が勝利得点を獲得したならその配分を行う(勝利得点配分フェイズ)。その後で、ガミラス軍移動フェイズテロン軍移動フェイズ(ヤマト側)を行い、最後にヤマトの損傷を確定(損傷確定フェイズ)する。

ヤマト(と出撃した艦載機)は、ルールにしたがって自動的に移動するか、あるいはその場にとどまる。ガミラス軍(プレイヤー)はそれを見越した上で、先だって計画的に移動を行うことができるということだ。

このターン構成は、劇中でガミラス軍はヤマトの動向を完全に把握しており、一方ヤマト側は反射衛星砲の存在を知らずに不意打ちとなった状況を反映したものとなっている。

ゲームの流れ

ゲームは大きく3つの段階に分かれる。まず冥王星基地へ進攻するヤマトを反射衛星砲で迎撃する「Aパート」で開始され、次に、大破したかに見えるヤマトを撃沈したか確認する「戦果確認」を経て、いよいよヤマトの反撃が開始される「Bパート」に突入する。

「Aパート」は第5話「死角なき罠」に相当するパートで、ゲームではヤマトへの命中はそのまま損傷として計上される。命中数が6になった時点で、損傷を確定する「戦果確認」が行われ、その後で「Bパート」となるわけだ。A、Bの各パートで異なるヤマトの損傷判定については後述する。

命中と損傷

ヤマトへの命中と損傷が、特殊能力を持つヤマトのクルー登場と結びついているルールが本作の特徴のひとつだ。

ゲーム開始時に、損傷マーカーとヤマトのクルーマーカーを裏向きにしてシャッフルし、ひとまとめにしておく。これを「損傷プール」と呼ぶ。損傷プールは袋で管理してもいいだろう。クルーマーカーは9枚あり、それぞれにヤマトのキャラクターひとりのイラストと名前が記載されている。

損傷プール

ヤマトの損傷は「テロン戦艦損害記録チャート」で管理する。「テロン」とは、ガミラス陣営における地球の呼称であり、つまり「テロン戦艦」とはヤマトのことである。このチャートには6つの命中箇所を示すマスがある。ガミラス軍からの攻撃が命中し、損傷を受けるたびにダイス1個を振って命中箇所を決定する。

テロン戦艦損害記録チャート

ヤマトに対してガミラス側の攻撃が命中した場合、1回の命中について損傷プールからマーカーを1枚ランダムに引く。もし、それが損傷マーカーならば、ターン終了時にヤマトへの損傷判定が行われる。しかしクルーマーカーなら、損傷は発生せず、そのクルーの持つ特殊効果が適用される(あるいは、継続的に適用されるようになる)。

命中と損傷

ヤマトの損傷判定は、損傷マーカーごとにダイス1個をふって、命中箇所を決定する。ヤマトが損傷マーカーを6個被るか、あるいは波動エンジンに3個の損傷マーカーが置かれるとヤマトは撃沈となる(ゲームは終了して勝利判定を行う)。

上述の通り、命中箇所の候補は6箇所ある。損傷マーカーが配置された場所や、命中箇所ごとに配置された損傷マーカーの個数によって、ヤマトの様々な機能が低下したり、停止したりする。

ゲーム開始からのAパート特別ルール

ゲーム開始直後の「Aパート」では、この損傷処理を簡易化する特別ルールが適用される。すなわち、損傷プールから引いたマーカーは裏向きのままで、ひとまず損傷マーカーとして扱われて命中箇所の判定が行われる。そしてAパートで損害記録チャートへ裏向きのマーカーがヤマトに6個置かれると、そこで初めて「戦果確認」が行われる(この場合の『戦果』とはガミラス側にとっての戦果)だ。

Aパート命中判定

「戦果確認」では、「Aパート」で損害記録チャートに裏向きに置かれているマーカーを、任意の順番で1枚ずつ表向きにする。もしそれがクルーだったなら、それは損傷として扱われず、クルーが持つ特殊効果の適用がなされる。つまり、ヤマトがAパートで被った真の損傷数がここで明らかになるわけだ。

劇中でも、第5話ではヤマトは一方的にロングレンジ攻撃を受けるのみで、クルーたちの活躍はほとんど見られない。またガミラス側も、ヤマトに3度もの大口径ビーム直撃を食らわせて海の底へ沈んでいく様を見て、ヤマトを撃沈したものと思い込んでしまい、シュルツは第6話でデスラー総統にその報告を行っている。この状況を模したのが「Aパート」の特別ルールである。

そして「戦果確認」を行った後、ヤマトが撃沈されていない(めくったマーカーに少なくとも1枚のクルーが含まれていた)のであれば、そのまま「Bパート」に移行する。劇中でもそうであったように、実質的にゲームはここからが本番だといえるだろう。

ヤマトの「危険度」

第4話「氷原の墓標」(本作の原作となった話の直前)では、ヤマトの航海には時間的な制約があることが示されている。彼らは、航海のタイムスケジュールに大きく影響が出るような行動について、それを断念することも積極的に検討している。

またヤマトを迎撃するガミラス軍にも思惑があった。冥王星前線基地に駐在しているのはザルツ出身の二等ガミラス人たちであり、彼らはどうしてもデスラー総統に「ヤマト撃沈」の報告をして、屈辱的な地位に甘んじている自分たちの存在を何としてでも誇示したかった。

ヤマト・ガミラス双方が抱えている、これらの複雑な事情は、本作では「危険度」という抽象的なパラメータで簡潔に表現されている。

「危険度」は、ヤマトに損傷マーカーが置かれるか、あるいはガミラス艦が出撃するたびに上昇する。逆に、冥王星の地上施設が1個破壊されるたびに下落する。

もし、「危険度」が「7」以上になると、ヤマトは「転進モード」となる。ひとたび転進モードとなったヤマトの状態はゲーム終了まで変わらない。そして転進モードのヤマトは、テロン軍移動フェイズで冥王星から遠ざかるように移動し、これが「深宇宙」マスに到達した時点でゲームは終了する(ヤマトは冥王星基地の攻略を諦めて、早々にイスカンダルへ向かったのである)。

これはガミラス、つまりプレイヤーにとってはゆゆしき事態である。というのも、勝利条件的に、ガミラスにとって最良の結果をもたらすためには、ヤマトの撃沈が前提だからだ。転進モードのヤマト追撃に失敗して逃げられてしまったら実質的に敗北である。

独特のジレンマ

プレイヤーはヤマトへ攻撃を行って損傷を与えたいが、損傷マーカーが引かれずクルーばかりだとヤマトはどんどん強化されてしまう。損傷を与えればヤマトは機能を低下させていくものの、余りにも早く戦果を上げすぎると無駄に危険度が上昇しすぎて、今度はヤマトが転進して深宇宙へ逃げおおせてしまう。

いずれにせよ、ヤマトに対して攻撃を行わなければ勝利は得られない。だから、適度にヤマトを痛めつけつつ撃沈を目指す。ランダム要素が大きい本作でその道は細いが、勝機はそこにしかないのだ。このジレンマはユニークで、原作の雰囲気をよく表現しており、本作独特の戦略性にも結びついていると感じた。

プレイ方針の考察(私案)

ガミラス軍にとってヤマトのクルーは大きな脅威だ。その能力は強大で、これまでの戦果を一気にぬぐい去ってしまうことすら珍しくない。だが弱点もある。劇中でもそうだが、ヤマトのクルーは個人的な能力に秀でた集団であり、組織的な方針は時に個の自発的な判断で翻される。

アクティベート・クルー

本作でも、ヤマトのクルーには横の連携がない。このため、登場するタイミングで(ヤマト陣営にとって)問題が起こりやすいのが、損傷マーカーを取り除く能力を持つ真田副長と徳川機関長の2人である。

ガミラス軍にとっての良いパターンのひとつは、ゲーム開始からしばらくの間は命中数で勝利得点を稼ぎ、その後に真田がアクティベートすることで損傷マーカーが取り除かれることである(真田は波動エンジンを除いた命中箇所にある損傷マーカーを取り除く効果を持つ)。損傷マーカーが取り除かれると危険度も下がるので、ガミラス軍にとってヤマト転進のリスクが低下し、更に攻撃機会が増えるので勝利得点の積み上げが期待できるからだ。また真田は波動エンジンを修復しないので、もし、ヤマトが波動エンジンの損傷による機能低下を引き起こしているのであれば、その状態は改善されないまま続くというメリットもある。

同じ修理能力でも徳川機関長は少し事情が異なる。徳川は、波動エンジンの損傷のみを修復する能力を持っているので、彼が損傷プールにいる間は、勝利得点をコストとして支払わなければならない「ピンポイント攻撃」を波動エンジンに対して行うのはあまり意味がない。ただし、徳川が引かれたときに、波動エンジンに損傷マーカーが1個でもあれば、徳川はそれを修復してゲームから取り除かれる。したがって、徳川を無力化する目的であれば、早い段階で波動エンジンを狙っておく手はあるかもしれない。

勝利得点が少ない状態で真田がゲームから除外された場合は、ピンポイント攻撃は控えめにして、速やかにヤマトを撃沈させることに集中する。ヤマトが転進モードになったとしても、撃沈してしまえば少なくともAランク判定の勝利が確定するからだ(もちろん、どんな状況であっても常に目指すのはSランクの勝利ではあるが)。

ギャラリー