京都

メビウスゲームズ20周年を記念作品

京都

メビウスゲームズ20周年を記念して制作されたライナー・クニツィア氏デザインによるオリジナルゲームだ。プレイヤーは日本庭園を造る庭師となり、互いに協力しながらも、自分の得意とする分野を活用しつつ得点を競うタイル配置ゲームで、シンプルで戦略性の高い作品となっている。基本ルールは2~4人用だが、それとは別にソリティアルールがあり。本稿はそれについてレビューである。

基本ルール概要

まずは、2~4人プレイでの基本ルールを概説しよう。

「京都」のコンポーネントは数十枚のタイルのみで構成されている。ゲーム中で使用する主なタイルは庭タイルと呼ばれる。庭タイルは48枚あり、それとは別にスタートタイル(庭タイルと構成は同じ)が1枚がある。

庭タイルは4つの区画に分割され、それぞれの区画には「絵柄」が描かれている。絵柄には「コケ(緑)」「池(青)」「紅葉(赤)「砂利(白)」の4種がある。

京都の庭タイル

この絵柄の構成によって、庭タイルはには大きく分けて2つのタイプがある。すなわち、4種の絵柄があるものと、3種の絵柄があるものの2つである。

4種の絵柄がある庭タイルには、4区画にそれぞれ異なる絵柄が描かれている。3種の絵柄がある庭タイルには、隣接する2区画(タイルの半分の面積を占める)に1種の絵柄があり、他の2区画にそれ以外の絵柄3種のうち2種がある配置になっている。

ゲームを始める準備として、これらの庭タイル48枚をよくまぜて山にしてから、場にスタートタイルを1枚置く。各プレイヤーは庭タイルを手札として1枚ずつ持つ。

自分の手番になったら、手持ちの庭タイルを場に配置する。配置する際、既に場に配置されている庭タイルに、少なくとも1辺が完全に接するように置かなければならない(例えば、タイルを半分ずらして配置するようなことはできない)。

たった今配置したタイルの絵柄が、既に置かれているタイルの絵柄と接するように配置されたのであれば1ポイントになる。もし、その絵柄が複数のタイルでタテかヨコに連続しているのであれば、連鎖している庭タイルの枚数がポイントとなる。ただし、手番で配置した庭タイルは、この枚数には数えない。複数の絵柄でポイントが発生する条件が満たされているのであれば、絵柄ごとにポイントを計上する。

2人以上でプレイする場合には「得意分野」というルールがある。得意分野はプレイヤーごとに異なっていて、ゲーム開始時に1種類の絵柄がランダムに指定される。自分の得意分野の絵柄から得られるポイントは2倍して計算する。

ポイント

ポイントは紙に書いて記録する。最後に、山から1枚の庭タイルを引いて手番を終了する。もし、山に庭タイルがなくなっていれば引かない。全員の手札がなくなってすべての庭タイルが場に配置されたのであれば、そのプレイヤーの手番が終了した時点でゲームは終了する。累計のポイントが高いプレイヤーが勝利する(タイブレークはない)。

ソリティアルール

本作のソリティアルールは、以下の2つの点で基本ルールと異なっている。

  1. 得意分野はない
    得意分野タイルも使用しない。したがってポイントは、連鎖した同絵柄の庭タイル1枚につき1ポイントとなる。
  2. 配置エリアは最大5x5タイルまで
    配置エリア
    場に庭タイルをタテ5枚、ヨコ5枚までしか配置することができない。5x5枚のエリアいっぱいに庭タイルが配置されたら、そこでゲームは終了する。つまりすべての庭タイルが使われることはない。スタートタイルが最初に1枚あるので、山から引くタイルは24枚ということである。

ソリティアルールで右の図のような場のときには、庭タイルを配置可能な位置は点線枠のいずれかだけになる。そうでない位置へは、場の庭タイルに隣接した位置であっても配置することはできない(5x5枚のエリアを越えてしまうため)。

またこの例では、最上段に庭タイルを配置したらタテの5枚が確定するので、最下段の点線枠の位置へは庭タイルを配置できなくなる。同様に、最下段に庭タイルを配置したら、最上段の点線枠の位置へ庭タイルを配置できなくなる。

タイルの枚数と構成

ソリティアをプレイするに当たって、どのようなタイルがあるかを事前に知ることは重要である。本作では、庭タイルの総枚数は48枚であると上述した。それらを暗記する必要はない。というのも、庭タイルの構成には法則があるからだ。まず4種絵柄の庭タイルから考えよう。

異なる4種の絵柄が、庭タイルの4区画に並ぶ順列の総数はP(4,4)=24である。ただし、1枚のタイルは2x2区画があり、タイルは90°単位で回転する。タイルが回転しても、各区画に配置されている絵柄について、その相対的な位置関係が一致すれば同じである(円順列)。

4種絵柄の同一タイル例

ようするに、4種絵柄の庭タイルは全24枚あり、実質的に同じ絵柄の配置となっている庭タイルが4枚ずつある。したがって4種絵柄の庭タイルは6種類(=24÷4)ある。1種類の庭タイルが4枚ずつで6種類だから計24枚ということである。

4種絵柄の庭タイル構成

続いて3種絵柄の庭タイルを見てみよう。こちらも24枚ある。ある絵柄が2区画を占有した場合、他の2区画は、それ以外の絵柄3種のうち2種が配置される。つまり、2区画を占有する絵柄を除く3種から2種が選ばれて並ぶ順列P(3,2)=6なので、絵柄ごとに各6枚ずつの3種絵柄の庭タイルがあり、総数は4x6=24枚となる。

3種絵柄の庭タイル構成例

まとめると、4種絵柄の庭タイルは6種4枚ずつで、3種絵柄の庭タイルは24枚で重複がない。この2つのことは、本作を攻略する上での要点となる(これはソリティアだけではなく、対人戦でも同様のことだ)。

補足:上述のように庭タイルは理路整然とした構成なのだが、これにスタートタイルの1枚が加わるため、ほんの少しだけ数値がひずむ。具体的には、4種絵柄の庭タイル6種のうち1種だけは場に(4枚ではなく)5枚置かれる可能性があるのだ。これはクニツィア氏が意図したひずみなのか、あるいはプレイアビリティを優先してわずかなひずみなど無視したのかは不明である。

効率的な得点方法の基本

当然ながらソリティアには他人の干渉がない。一方で、場に最大で5枚x5枚にしか並べることができないという制限がある。したがって、序盤から先々を考えたパズル的な思考が必要となるだろう。

狭い場で効率的に得点するために、絵柄のチェーンを長く保つことと、それを複数の絵柄で維持することの2点を軸に考えてみよう。

絵柄チェーンを長くするためには、3種絵柄の庭タイルが欠かせない。4種絵柄の庭タイルだけでは4連鎖(3点)が限界であり、しかも4連鎖を行ったときにその絵柄のチェーンは閉じられてしまう。チェーンを長く保つことで、庭タイルを配置するごとに加点するので、1枚の庭タイルから何度もポイントを得られることにもなる。

効果的なタイル配置例

さらに、このようなチェーンを複数の絵柄で「準備」しておくことも考えておこう。チェーンはいつか必ず閉じてしまう。そうなったときに、別にチェーンを改めて始めるのではなく、既に準備してあるチェーンに「切り替える」ことができるのが理想だ。

庭タイルはランダムに引くだけなのでプレイヤーの意思で選べないが、庭タイルの種類と総数は決まっているのだから、少なくとも3種絵柄の庭タイルについては、残っているものが何かを意識しておいた方がよい。

5x5と狭い場なので、どれだけうまくやってもやがては行き詰まるし、そうなると運を天に任せることも多くなるだろう。そのような苦しい状況下で「勝負」に出るときであっても、庭タイルの残数、狙っている庭タイルを引く確率、それで得られる点数、目的のタイルが引けなかったらどう対応するか等々、出来ることはすべてやっておこう。

「京都」はシンプルな構造のゲームである。しかし悩ましく、そしてプレイ中に考えることは多い。良いゲームである。何度もプレイしていくうちに、あなたは他にも細かなテクニックを多く発見することになるだろう。

なお、ソリティアルールには勝利条件がなく、より高得点を目指すことがルールには示されているのみである。これで培った幾つかのテクニックを応用して、対人戦でも高得点を目指そう。

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