元亀争乱

ソリティア信長包囲網

元亀争乱

信長上洛。足利義昭を奉じ、京への上洛を果たした信長であったが、それは周辺勢力の猛反発を招いた。これが、俗に「信長包囲網」と呼ばれる抵抗勢力の合従連衡につながり、信長の生涯に渡る覇権を賭けた戦いとなるのである。

概要

ウォーゲーム日本史

本作は、信長が上洛してから本能寺の変によって没するまでの期間を、信長の視点と立場でプレイする史実に基づいたソリティアである。

ゲームの目的は「包囲網」を構成する五つの勢力、すなわち「朝倉」「武田」「上杉」「毛利」「本願寺」の拠点をできるだけ多く支配することだ。

本作にはこの他にも中小の反信長勢力が多数登場する。時には、家臣が裏切って敵方に付くこともある。唯一の同盟国は、史実と同じく徳川家康のみだ。

元亀争乱ユニット

本作には、戦闘部隊であり、また人的資源をも表す「ユニット」が実名武将付きで登場する。ユニットは「戦闘力」「作戦値」「レベル」でレーティングされている。

高いレベルのユニットは、下位レベルのユニットを組み入れて「軍団」と呼ばれるチームを編成することで、より効率的な軍事行動を行えるようになる。

軍団編成

敵の勢力は、京を目指して周辺地域から攻め上ってきたり、あるいは指定された地点に発生したりする。それらからの防御や攻撃手段は、これらのユニットや、そのチームである軍団を運用するによってのみ行われる。

このユニットは「再編成」や「粛正」によって、より上位の指揮権を与えるよう昇進(=レベルを上げる)させることができる。それには、同じレベル(高くても低くても不可)の別ユニットが、いわばライバルとして必要となっている点が面白い。

レベルは軍団編成に重要な意味を持つなど、組織全体の総合的な軍事力を底上げするためにも重要な要素になっている。

レベルアップ

人材(ユニット)の計画的な登用は、戦略・戦術の両面で極めて重要である。しかし安易に増員すると、資金の枯渇だけではなく、軍全体の質的低下を招く恐れもあるようにもなっている。(編成判定ルール)。

シンプルなルールで、リアルな管理職のジレンマを感じさせてくれるだろう。

プレイヤーは、個々のユニット運用だけではなく、家臣団(組織)全体のマネージメントも要求される。これは「政治」「威信」「軍事」「銭」という4つのパラメータとで管理される。

各種トラック

「政治」は朝廷や経済への影響力、「威信」は家臣からの信望、そして「軍事」は部隊の練度や装備の充実度を表している。軍事的はもちろん、内政的な行動でも金銭的なコストがかかることがあり、それは「銭」という形で表される。

ゲームの進行管理は30枚のカードによって行われる。これを各ターンに1枚ずつ引いてオープンし、そこに書かれたイベントなどを実施する。敵軍はこのカードによってのみ進攻するし、他にもそれ以外のイベントが発生したり、何らかの判定を行うように促されたりする。

カードによって次々に提示されるイシューを解決するために、まずは予算から導き出される作戦の選択、それを実際に行う軍団を編成し、効率的な運用(=作戦の発動や戦闘)を考える。家臣(ユニット)の能力に応じた組織改編・昇進(=レベル上げ)の計画・配置転換、そして決して避けられない突発的なアクシデントに対しての臨機応変な対応と事前準備など、幅広い総合的な視点で家臣団をマネージメントし、限られた人員・予算・時間を駆使して、この難局を乗り切らなければならない。

「元亀騒乱 ~ソリティア信長包囲網~」は、ウォーゲームとしては比較的シンプルなルールながら、本格的なマネージメント要素が随所に盛り込まれた、完成度の高い国産ソリティアウォーゲームである。

オープンゲームのすすめ

「元亀争乱」は優秀なウォー&マネージメントゲームだ。しかし最初からプレイヤーに大きな裁量が委ねられているため、どのような方針でゲームを進めていいものか見当もつかないかもしれない。本誌にはチュートリアルとしての素晴らしいリプレイ記事が掲載されているのでルールはそれを読めば理解しやすい。だがゲーム的には、あの記事の過程は成功とは言い難い(どちらかといえば失敗に近い)。

カードに書かれたイベントに流されて失敗を繰り返しながら、何度もリトライしてコツをつかんでいくやり方は制作者の意図するところのようだが、それならばこれをもう少し効率的に行う方法を考えてみたい。

オープンゲーム

ゲームを進める上でキモになるのはカードである。どのようなイベントがいつ起こるのか予測した上で、その対応の準備を行って、それを正確に実現し続けることが攻略の基本方針となる。

これを修得しやすくするための練習環境として「オープンゲーム」を試してみよう。これは以下のように行う。

プレイヤーはまずヒストリカル・ゲームを行うだろう。このとき、カードは山札にするのではなく、全て表向きにして並べるのだ。そもそもヒストリカル・ゲームで山札はカード番号順に積まれるし、本作は記億ゲームでもないので、ルール的にも特に問題は発生しない。

現在のターンはポーンやコマを置くと良い。その他(写真のように)登場する敵ユニットやイベントにコマやマーカーを置くのもいいだろう。

カードが表向きに見えているのだから、プレイヤーはどんなイベントがどの順番で発生するのか正確に知ることができる。つまりイベントスケジュールが明確となる。そのスケジュールに対応して、現時点の戦力下で最適な軍団の編成、新規ユニットの雇用計画、そして敵ユニットの動きに対応した軍団の派遣と配置など、ある程度の先を見越した具体的な計画を立てやすくなる。

リセット&リトライを繰り返すことで覚えることは多くある。それならば、山札からカードを引いてプレイするより、この方法でやった方がずっと早く攻略の基本を習得できるだろう(運の比重が大きいゲームなので、必ずしも毎回うまくいくとは限らないが)。まずはヒストリカル・ゲームのオープン環境で、ゲームをどのようにコントロールするかコツをつかもう。

この環境で十分に自信がついたら、今度はオルタナティブ・ゲームのオープンゲームを行うとよい。つまり、山札をシャッフルした上で全て表向きにしてスタートするのだ。難易度はヒストリカル・ゲームに比べて格段に上昇するが、基本的な考え方はヒストリカル・ゲームと変わらない。まずは表向きに並んだカードを吟味し、事前に十分考えることだ。

オルタナティブ・ゲームのオープンゲーム環境で難易度を上昇させたいのであれば、オープンするカードの枚数を少なくしていくとよい。例えば山札の最初の10枚だけを表向きにするなど。見えない情報が増えるほど難易度は増す。そして最後はルール通りのオルタナティブ・ゲームに挑戦してみよう。これまでの経験が役に立つに違いない。

作戦研究とプレイ環境のカスタマイズ

※本作の作戦研究やプレイ環境のカスタマイズについてはボリュームが多くなりそうなので、後日に特設ページでまとめる予定である。

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